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一騎討ち

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一騎討ち

一人の日本人と一人の魔族が対峙していた。

男の名は草薙悠弥。
(自称)只の日本人。

無道の名を持つ男、草薙悠弥。
手段を選ばず、道を問わず。
殺し犯して滅ぼすもの。
非道を行い欲望のままにいきる事も良しとするもの。

男だ数多の敵を殺し――そして数多の弱き人々を助けてき存在である。

対峙する魔族は尋常ならざる気配を発していた。

災厄をもたらす魔族の一柱として数えられる存在。
数多の人間を殺し世界に災厄をふりまく存在である。

これは正義と悪の戦いではない。

狂気の悪と純粋悪の戦いだった。

周りには幾多の魔族が戦いの趨勢をみていた。
悪意に満ちた目で草薙を見ている。

数多の悪意にさらされながらも、草薙は目の前の大敵に殺意をみなぎらせていた。

「ガアアアァァ!!」

雄叫びと共に、巨漢の魔族が吼えた。

魔族は日本の水源を犯していた。

草薙はこの山地の水が汚染を止めるため単身、魔族の拠点に乗り込んでいた。

草薙の周りには数多の死骸が転がっていた。

死屍累々。
醜悪な魔物、屈強な魔族の血や骨が散乱している。
その光景は地獄の様だった。
草薙悠弥という男が、容赦なく
多くの魔族を屠った事を示していた。

「お前達はこの国の水源を汚した」

――草薙は静かな怒りを口にした。

「お前達は俺の国民に手を出した」

故に国敵許しはしない。

全身から発せられる殺気がそう語っている。

巨躯の魔族が草薙から感じているのは一つだった。

「狂人がア!?」

狂気。

魔族が草薙から感じていたのはそれだった。

「なんのつもりだ貴様は!」

魔族は怒る。

「貴様らは餌だ! 我らガルディゲンの家畜だ」

巨躯の魔族が宣言する。
草薙を殺すべく全身から力を漲らせる。

「なのになぜそのような目をする!!」

この巨躯の魔族が恐怖を覚えるほどの狂気と殺気。
魔族はそれが気にくわなかった。

「貴様は救いにきたのか、それとも滅ぼしにきたのか」

「どちらでもいい」

「ほう」

「大して変わらんよ。英雄と殺戮者の違い位だ」

そこに大きな差はない。
故に――

「――国敵討滅」

己の理を実行するだけ。

「死ねえええぇぇ」

双方がはしる。

一騎討ち。

轟!!
魔族が斧を振り上げた。

魔族の斧が幾多の魔光線を空間にはしらせた。

瞬間、空間が破砕された。

一瞬で幾多の斬撃がはしる。

巨大な体。
巨大な斧からは想像できないほどの高速の攻撃。

力押しの中に塵殺の戦理が根付いていた。

瞬間草薙が動いた。
激しい風が吹く。

――国敵討滅

風が吹いた。
嵐を集束したかのような疾風を自身にのせ、超高速で回避。

魔光の斬撃をかいくぐる
そして――

――撃つ!!

撃ち放たれた一撃。
草薙が巨躯の魔族の腹腔を撃ち抜く。
ボキボキと骨が折れる音が響いた。

魔族が怒る。
腕をラリアットのように振り回した。
草薙を殴りつける。
人間なら全身の骨が粉々に砕けるであろう衝撃。

だが――

ドゴオオ!!

(ぶっ殺す)

額から流血しながらも草薙が巨躯の魔族をぶん殴る。
草薙の大木を薙ぎ倒すが如き拳が流線を描き、魔族に炸裂した。
巨躯の魔族の膝が折れる。
そして草薙が――頭突き。
魔族の頭が揺れる。
草薙の額から更に血が出る。だが――
(知った事じゃねぇ)

道理も痛みもおかまいなし。
荒々しく草薙が攻める。

「愚か、者がああぁ」

魔族が頭突きを返す。
望む所だ殺してやると憎悪と敵意を振り絞る。

「うるっせぇ馬鹿野郎ぉぉぉ!!」

ヘッドバッド。
巨躯の魔族の額から更に地が噴出する。
草薙が殴る。
魔族が殴る。

一歩も引かない。
殴り合う音だけが響く。
まるで、デスマッチ。
ヤクザめいた戦い。

野獣のような戦いがそこにあった。

雄々しさのような塊のような魔族と正面から野獣めいた戦いをしかける草薙は端的にいってまともではない。
激しい乱打が双方で応酬する。

男と男。
野獣と野獣の殴り合いであった。
だが――

「国敵がああぁ!!」

草薙の怒りを込めた一撃が魔族に叩き込まれた。

巨躯の魔族が膝をつく。

「ガアアアア」

雄々しさの塊であるかのような魔族が血を逆流させる。

戦斧を潰さんばかりに握りしめる。
膨大な力が収束。
天を貫かんばかりに魔光を帯びた戦斧を掲げた。

「死ねええぇぇぇ」

戦斧が大気を切り裂き振り下ろされた。

草薙は駆けた。

――

死線を征く。

魔族の攻撃は凄まじいの一語。

かすっただけで常人なら即死。

しかしその攻撃に真っ向から草薙は立ち向かった。

拳を放つ。
あるのは只の決意。

――俺の国民に手を出すな

風を纏う。

ドゴオオオオオォ

草薙が巨躯の魔族を撃ち抜いた。

正面から疾風の如く接近し斧の刃圏を突破したのだ。

捨身断命の一撃が魔族を貫く。
魔人が血を吐いた。

――滅ぼす

撃つ、撃つ、撃つ。

撃ちてし止まぬと嵐の如く攻撃を撃ちはなった。
肉を裂く、骨を砕く。

魔族の残酷な所業の犠牲となってきた人々に報いるかのように。

「き――ざまあああ」

魔族が吠えた。
猛り、総身から力を振り絞る。

ゴウゥッ!!

絶望と暴性を形にしたかのような
斧が振り下ろされる。

――
草薙は時が止まったかのような静寂を感じていた

横に避けるのではない、草薙はあくまで前進。

風を纏った一撃。
草薙が戦斧を根本から撃ち抜いた。

「――国敵討滅」

神理が戦いの終焉を告げる

「おおおおぉぉぉ!!」

獅子吼と共に草薙は一撃を撃ち抜く。

巨躯の魔族の顔面を粉々に撃ち砕いた。
血と骨を撒き散らし、巨漢の魔族が砕け散る。

砕かれた魔族の血が雨のように降り注ぐ。

壮絶な光景に、仲間の魔族は息を飲んだ。

傍らには肉塊が転がっている。

草薙が倒した巨漢の魔族は、災厄の一柱として数えられる
名の知れた魔族だった。

その存在が滅ぼされた。

残酷に。
非道に。

殺された。
滅ぼされた。

その事実に生き残りの魔族が恐怖におののいた。

――国敵討滅

その言葉は魔族に恐怖を与えた。
本能的な恐怖。
これは悪を以て悪を殺す存在だと、生き残った魔族は確信する。

「奴等に伝えろ」

草薙は静かに口を開いた。

「俺の国民に手を出すなとな」

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