――いただきます
草薙は手を合わせた。
「サンマ寿司か……」
目の前にあるのは秋刀魚(サンマ)寿司。
サンマ寿司は日本の伝統料理。
紀伊地方の郷土料理でもある。
うまそうだ。
それに、草薙には今回思う所があった。
(このサンマ寿司は……)
知っているサンマ寿司だ。
草薙が知っている、よく知る所が作ったサンマ寿司である。
ある神社が日本人のために作ったサンマ寿司。その一つが草薙の手元にあった。
サンマ寿司が日本の伝統料理であり、地方の郷土料理という事もあるのだろう。
(いいな)
どこか……懐かしさを感じた。
草薙はサンマ寿司を見る。
――秋刀魚(サンマ)だ。
秋刀魚(サンマ)はうまい。
草薙はサンマが好きだ
醤油にかけてもうまい。
柚子をかけて食べてもうまい。
そして――
(実に……うまそうだ)
寿司にするとうまいのだ。
サンマ寿司を見る。
――白い飯。
酢がのっているであろう。
(酢飯、酢飯だな)
白い酢飯だ。
そしてその酢飯の上に乗っているものがあった。
サンマだ。
サンマが乗っているのだ。
サンマは綺麗だった。
ご飯の上に乗っているサンマが素晴らしい。
テラテラと輝くサンマ。
サンマの油と酢がのっているのであろう。
「……」
草薙は思う。このサンマ寿司を料理した人間の真心を思う。
(食うか)
サンマ寿司を――食べる。
真っ先に浮かんだ言葉があった。
(――うまい)
酢飯の味が口内に広がる。
(米酢だな)
米酢は米から作られる。
日本料理に欠かせない酢、その米酢は米から作られるのだ。
酢飯からには日本が詰まっているといっていい。
(酢が染みている)
米に酢がぎゅぅっと詰まっている。酢は多め。だがそれもまた良し。
まるで体にたまった疲れが解きほぐされるような感覚さえあった。
まるでサンマ寿司を作った人間が日本人の健康の事を想い酢をたっぷり米にかけたかのようである。
そしてなにより……
(サンマが……)
うまい!
実にうまい!!
サンマの身がうまい。
サンマの油がうまい。
日本の伝統調味料、お酢がサンマに染み込んでいる。
潮の味がする。
酢の味がする。
米の味がする。
それらの旨みが混ざりあって実に旨い。
それらの旨みが実に良い。
潮のかおり。
サンマの味。
酢飯の味。
丁寧にたっぷりと米に混ざったの酢。その酢飯に乗せられたサンマ。
(うまい)
サンマ寿司を口に運んでいく草薙。
サンマの歯ごたえ、サンマの旨みが実に良かった。
サンマ寿司を丁寧に作った事が、サンマ寿司から伝わってくる。
そして――
「――ごちそうさまでした」
草薙は手をあわせた。
作った人間の想いが伝わってきた。
食べる人間を幸せにしたい、食べる人間に元気になってもらいたい。
そんな想いを、草薙はキチンと感じた。
サンマや酢の健康が、草薙の肉体を快くしていくかのようだった。
(少し……考えすぎたか)
今日は少し考えすぎた、重くとらえすぎたかもしれない。
だが――
「それもまた良し」