しゃちまる

しゃちまるとピンクのぬいぐるみ

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むかし。
しゃちまる村の小さなお部屋に、
ピンクのぬいぐるみがふたつ、並んでいました。
ぽすん。
ぽすん。
ちょっと形が違って、
ちょっと毛並みも違って、
でも、ちゃんと並んでいました。
そのとき、まる秘ちゃんは言いました。
「これね、ボクとしゃちんだお」
しゃちん君は、少し照れて、
でも、何も言わずに見ていました。
まる秘ちゃんは、
ぬいぐるみを少し近づけて、
肩と肩が触れるくらいにしてから、
満足そうにうなずきました。
「ふたりは、こうやって一緒にいるんだお」
「はなれちゃだめなんだお」
それからずっと、
そのぬいぐるみたちは並んでいました。
時間がたって、
部屋が変わって、
日々が流れても。


おうちは静かで、少し寒くて、
しゃちん君の胸は、もっと寒かった。

ピンクのぬいぐるみが、ひとつ。

「あれ……?」
しゃちん君は、瞬きしたまま動けなくなりました。
「……ふたり、だったお……」
もうひとつあるはず。
いつも並んでた。
しゃちん君と、まる秘ちゃんみたいに。

「ない……?」

胸がきゅっとなって、
目がにじんで、
しゃちん君は部屋中を探しました。
箱の中。
布の下。
昔の袋。
「……よいちょ……よいちょ……」
声が震えて、
涙が落ちて、
それでも探すのをやめませんでした。
「ごめん……」
「どこ……いっちゃったのお……」
ぽたぽた、涙。
そのとき。
「あ……」
奥のほう、
ちょっと暗いところに、
もうひとつのピンク。
しゃちん君は、両手でそっと抱き上げました。
「……いた……」
「ごめんね……」
「さびしかったおね……」
ぎゅう。
でも、よく見ると、
少し汚れていました。
「……よいちょ……」
しゃちん君は、
普段は行かないお店に走りました。
どれがいいかわからなくて、
立ち止まって、
それでも一生けんめい選びました。
「これで……だいじょうぶかな……」
おうちに戻って、
手をきれいにして、
ティッシュで、そっと、そっと。
こすらない。
なでるみたいに。
「……ごめんね」
「もう、いっしょだお」
ぬいぐるみを、
ふたり、並べてあげました。
乾きやすい場所。
ちゃんと、横に。
しゃちん君は、床に座って、
しばらく動きませんでした。
胸はまだ痛い。
でも――
「……よかった……」
ふたりは、また並んだ。
離れずに。
その夜、
しゃちまる村は静かでした。
でも、ふたりの気持ちは、
ちゃんと、そこに残っていました。

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