心を、良いものでいっぱいに
「あなたの心を、良いものでいっぱいにしてください」
「あなたの周りにあるものを、あなたにとって良い事を考えて、穏やかな気持ちでいてください」
「自分に優しくしてあげてください」
――自分に優しく
その言葉が胸に染み渡る気がした。
俺は、命にとって良い事は何かを聞いた。
「私にとっての良い事、ですか」
彼女はパチクリと目を瞬かせた後、ニコリと微笑んだ
「太陽が出て、白いご飯を食べられる。この日本という優しい国に住んでいられる。あなたとお話ができる」
「ふふ、良い事がいっぱいです」
彼女の言う幸せはとても小さなものだった。
そして日本を褒める事を忘れないあたり、彼女らしい。
だがそういう事でいいなら、俺でもいくらか、良い事が思いつきそうだ。
<命>が優しく手を握ってくれた。
「私の言葉は日本を守る神様から教えてもらったものです。
私の心は決して明るくも強くもありません……そんな私が少しでもお役に立てれば嬉しいです……ですから」
「私に出来る事があればなんでも言ってくださいね」
<命>が優しく微笑みそう言った。
日本人に仕えるという彼女らしい言葉である。
そう言う彼女の顔を見ていると、不思議と色々良い事で心が満たされる気がしてきた。
「自分に優しくしてあげてください」
「自分の心を、自分にとって良いものでいっぱいにしてあげてください」
「大丈夫、あなたは大丈夫ですよ」